その男
池波正太郎先生の名作『その男』読破
病弱に生まれた杉虎太郎の半生を描いた小説。
親に疎まれ、川へ飛び込んだときに、偶然に助けてくれた恩師との出会い
幕末の勤王VS薩長の激動の時代に、様々な騒動に巻き込まれ
やがて仇討ちから、西南戦争の西郷隆盛のお供までして
筆者=池波の祖母と彼との仲にまで及ぶ、という文庫本3冊の大作でした。
が。
とにかく、さくっと読み切ってしまうのが、池波作品の凄い所。
引き込まれていく心地よさが,本当に春風のように爽快で。
(花粉とかPMは、混じらない風であることが必須)
作中にも書かれているのですが
昔の人々には温かい血が流れていた。
誰かのために生き、誰かとともに生きることが
当たり前のように,日常生活にありふれていた事が
戦後、どんどん失われていったこと。
何につけ白黒をつけようとしてしまい
人間らしい、その中間色(黄色や青色、赤色など)について
それを受け止めようとしない、さもしさ。
色んな人がいて、色んな考えがあって
自分の考えばかりを良しとして
そればかりを他人に押し付けようとする。
そしてスマホばかり触って、オンガク聴いたまま
コンビニで買ったコーヒーを片手に
横断歩道で止まった私の車に会釈することもなく
当然、とばかりに渡る、そこの女子に告ぐ。
ブサイクで、愛想も無かったら、ひき殺しても良い。
とは、とある居酒屋のお母さんの言葉。
いや、さすがに乱暴な言葉ではありますが
そういった部分は、常日頃の中で
人との関わりを意識していたい,改めて池波先生の主題に触れた
とても心地よい読書だったのでございます。